OPENING
フォーラム冒頭で開会を宣言した安倍晋三STSフォーラム名誉会長(前内閣総理大臣)は、「今後のポストコロナ時代には、科学技術の役割はこれまで以上に重要になってくる。『科学技術の光と影』の光を伸ばし、影をコントロールするというSTSの考え方にのっとり、この場で行われる議論や対話が科学技術のさらなる飛躍的な発展につながり、人類の明るい未来への道筋を切り開くことを願っている」とフォーラムへの期待を英語でスピーチした。
また、菅義偉内閣総理大臣からも特別メッセージが寄せられ尾身朝子衆議院議員が代読した。菅総理は「新型コロナウイルス対策をはじめ、近年人類にとって共通の対応を求められる課題がますます増加している」とし、デジタル化の加速に言及するとともに、「STSフォーラムが国際公共財として、知恵の共有の場として、ますます発展していくことを心から期待する」とフォーラムの意義を強調した。

STSフォーラム名誉会長
前内閣総理大臣 安倍 晋三氏

開会式に特別メッセージを寄せた内閣総理大臣 菅 義偉氏
出典: 首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/)
(左マド メッセージを代読した衆議院議員 尾身朝子氏)
続いて行われた「人類の未来のための科学技術」と題されたオープニングセッションでは、ロシア副首相のドミトリー・チェルニシェンコ氏がロシアにおけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の取り組みを紹介し、「IT(情報技術)を学ぶ学生を2年後には現在の3倍に増やす計画だ」と話した。メキシコのマルセロ・エブラル外務大臣は、「科学技術イノベーション(STI)は喫緊の課題。カリブ海諸国でも今後はプライオリティーの高い課題になる」と同地域での科学振興への意欲を語った。
また、欧州委員会(EC)委員のマリア・ガブリエル氏は、「COVID-19への対応では、イノベーションの重要性が改めて明らかになった。オープンな議論を行い、人々のネットワークにより、科学を通じて共通の解決策を見つけていくことが求められている」と話した。
ビデオメッセージを寄せた米国科学技術政策局のケルビン・ドログマイヤー局長は、日米間の科学技術協力協定などに言及し、両国間で生まれた多分野での技術開発がグローバルに生かされてきたと指摘。「科学技術はグローバルエンタープライズであり、STSフォーラムは自由に意見交換できる非常に重要な場だ。創造力とモチベーションがあれば、オンラインでも有意義な議論ができる」と伝えた。
次いで、トヨタ自動車の内山田竹志会長は、「COVID-19パンデミックに対する取り組みは人類全てに関わっており、世界中の人々の連帯が欠かせない。パンデミックをリスクとしてだけではなく科学技術のイノベーションやデジタル技術の社会実装の機会として捉え、現在を転換点とすることが求められている。脱炭素にむけた持続可能なエネルギーの実現も含め、あらゆる国・地域が運命共同体として活動していくことがこれまで以上に重要だ」と述べた。
開会式の最後に、尾身幸次STSフォーラム理事長は「人類の未来のため、科学技術の光と影に対処するために、STSフォーラムがますます重要性を増すことを願っている」と同フォーラムの未来にも期待を寄せた。

左から、ロシア副首相 ドミトリー・チェルニシェンコ氏、メキシコ外務大臣 マルセロ・ルイス・エブラル・カサウボン氏、欧州委員会委員 マリア・ガブリエル氏、米国科学技術政策局局長 ケルビン・ドログマイヤー氏、トヨタ自動車株式会社 代表取締役会長 内山田 竹志氏